読了:佐藤義典『実践マーケティング戦略』(日本能率協会マネジメントセンター、2015年〔初版:2005年〕)

佐藤義典『実践マーケティング戦略』を読了した。独自の「ピラミッドツール」を活用し、マーケティングを行う上で実践的な「戦略」を学べる内容となっている。

 

本書では、「戦略ピラミッド」を形作る上での5つのツールが紹介されている*1

 

1.戦略BASiCS

2.マインドフロー

3.ニーズの広さ深さ

4.売上5原則

5.プロダクトフロー

 

この中でも、とりわけ印象に残った「戦略BASiCS」について述べていく。

 

戦略BASiCS*2

「戦略BASiCS」とは、以下の項目の頭文字を取って名付けられたものである。

 

Battlefield 戦場

Asset マーケティング資産

Strength 強み・差別化ポイント

iは語呂合わせ

Customer 顧客ターゲット

Selling Message 売り文句

 

この中で私がある種衝撃を受けたのが、「戦場」の項目で述べられていた、以下の著者の言葉である*3

 

勝ちやすい戦場を選べば、努力量が同じでも、得られる果実が大きく違うのです。

 

「敵のいない戦場を選ぶ」ということです。そうすれば、戦わなくてすみます。

 

初めてこの言葉を目にした時、なんだか拍子抜けしたような気分になった。「戦場」を謳う割に、その言葉は単なる「逃げ」に過ぎないんじゃないか?という印象を受けたのだ。しかし、その後の解説を読んでいくにつれそれは間違いであると気づかされる。

 

実際の「戦場」と「マーケティングの戦場」は全く異なるのである。前者は物理的に戦う場所・土地のことであると分かるが、後者は複数の要素が組み合わされた上で成り立つものである。それは例えば「地域」、「ターゲット」、「競合商品・サービス」等である。

 

それでは、マーケティングの戦場の定義とはいかなるものが正しいのであろうか。著者は以下のように述べている*4

 

戦場はあなたが定義できますが、その正しさを認めるのは顧客です。戦場は「顧客の頭の中に存在する」のです。

 

ここで、先ほどの「逃げではないか」という疑問ががらりと変えられた。マーケティングの戦場は顧客次第で変わるのである。顧客の選択肢の数々が戦場となるのである。例えば、私が顧客だと仮定する。"どこかのカフェで休憩したいな。でも、今月は財布が寂しいし敷居の高いところは入りづらい・・・。それなら、気軽に入れてお手軽価格のベローチェドトールかな。どっちに行こうか?"・・・これこそが戦場である。

 

だからこそ、著者が述べているように「勝ちやすい戦場を選ぶ」ことも非常に重要なのである。それは、脅威(敵)が少なく伸びている戦場、自社の強みを活かせる戦場、競合他社が参入しづらい戦場など様々である。この中のどれにおいても、やはり「敵が少ない」「強みを活かせる」ということは重要なのである。

 

日頃、ぼんやりと「こんなサービスがあったらいいな」と様々思考を巡らせることがあるのだが、実際にそのサービスを出していくことになったらやはりある程度「敵の少ない」戦場を選びたいと思う。もちろん、伸びている市場には敵がたくさんいることがつきものである。それならば、競合相手を唸らせるぐらいの、大きな強みを持てばいい。それを考えるのは大変かつ時間のかかることであるかもしれないが、いつか敵が思わず逃げ出したくなるような、そんな強みを持ちたいと強く思う。

 

図解 実戦マーケティング戦略

図解 実戦マーケティング戦略

 

 

*1:参考:同前『実践マーケティング戦略』p.15。

*2:同前、pp.26~91。

*3:出典:同前、p.29,p.30。

*4:同前、p.33。