アイデア分析⑤

前回に引き続き、仮想のサービス案についてのアイデア分析を行う。今月は、照井伸彦・佐藤忠彦『現代マーケティング・リサーチ―市場を読み解くデータ分析』(有斐閣、2013年)を参考にする。

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サービス案

サービス名:「30s」(仮)

形態:スマートフォンアプリ、Webサイト

料金:無料(一部有料)内容:アーティスト側に曲、または動画の「聴いてほしいところ」の30秒を切り取ってもらい公開する。アーティスト側にとっては一番聴いてほしい部分を手軽に伝えることができ、リスナー側にとっては自分で飛ばす手間なく聴きたい部分を手軽に聴けるという「いいとこどり」のメリットがある。

 

質問紙作成のステップ

冒頭に掲載した記事にも挙げた「質問紙作成のステップ」を元に、仮サービス「30s」ユーザーの態度を測定するための項目を検討していきたい。

 

(1)マーケティング・リサーチで何を明らかにしたいのかを明確化

(a)リサーチの目的を検討

→ユーザーの態度を測定するため。

 

(b)目的に基づきリサーチ課題を具体的に決定

→いくつかの測定尺度に基づいた質問から得た回答(情報)をサービス改善案に繋げる。

 

(c)二次データや先行研究等からリサーチ課題に関する追加的情報を収集・調査に関する仮説を精緻化

→競合サービスの歴史や情報の調査・収集

→主なユーザー層を10~20代の男女と想定し、そこへ向けたアプローチを図る。

 

(2)必要となる情報を得るための質問を系統的に検討

(a)(1)で設定した調査仮説の元で、具体的な質問を決定

(b)各々の質問形式を決定

→具体的な意見を聞く際にだけ自由回答方式を用いる。その他の質問に関しては単項目尺度による質問と多項目尺度による質問を使い分ける。

→単項目尺度:仮サービス「30s」の性質上ある程度競合サービスは絞られるため、複数の競合他社と比較するような順位尺度は省く。その代わりに、比較尺度を用いる。

また、定和尺度を用いた質問には少々時間がかかるため基本的には項目別カテゴリ尺度を用いるものとする。

→多項目尺度:主にサービスの満足度を調査するために複数項目を尋ねる。

 

(3)質問の順番、ワーディングおよびレイアウトを決定

(a)どのようなワーディングで質問するかを決定

(b)典型的な被験者の理解力・知識・能力およびやる気を想定した上で質問が適切かどうかを評価

→専門用語を盛り込まず、各ユーザーに分かりやすい表現を心がける。長々とした質問は避け、自由回答方式の質問は最低限に留める。

 

(c)適切な順番でそれらの質問をレイアウト

→最初の現状を尋ねる質問(満足度)から最後にかけてサービスの将来性(維持率、リピート率、推奨率)を尋ねる質問へと段階を踏んでゆく。

 

(4)質問内容に関して不備や不明確な点がないかプレテスト・検討

(a)全体として質問紙が妥当かどうか、測定したいものが測定できるかどうかをチェック

(b)不十分な箇所、誤り等を修正

→状況に応じて測定尺度の変更・追加を行う。

 

(5)質問紙を修正

必要に応じて上記ステップを繰り返し、質問紙を精緻化し、完成させる

 

質問紙

上記を元に作成した質問紙が以下の通りである。

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おわりに

質問紙を作成していく上で、ワーディングや順序、質問形式について熟慮するのは困難ながらも興味深い時間であった。態度を測るための尺度は様々あり、単項目か多項目かによっても消費者(ユーザー)への印象は大きく変わると思われる。「典型的な被験者の理解力・知識・能力およびやる気を想定」することは、難しいがリサーチの上では大きく要となる部分なのではないかと感じる。

 

これから、マーケティング・リサーチについての現代的役割やその論理・技法について理解を深めていきたいと思う。

 

参考

現代マーケティング・リサーチ -- 市場を読み解くデータ分析

現代マーケティング・リサーチ -- 市場を読み解くデータ分析