「ビジネスモデルデザイン1日体験コース(基礎編I)」総括

昨日、白井和康先生の「ビジネスモデルデザイン1日体験コース(基礎編I)」を受けてきた。ビジネスモデルデザインを軸にグループワークを行うといった内容であった。このセミナーを通じて学んだこと、感じたことを書いていきたいと思う。

 

1.ビジネスモデルデザイン

ビジネスモデルとは、組織が価値生成・提供を行う対価として金銭獲得を行う論理的根拠を説明するものである。(参考:アレックス・オスターワルダー)

これに基づき、ビジネスモデルの描写を行うことを「ビジネスモデルデザイン」と呼ぶ。

 

ビジネスモデルデザイン(以下、BMD)の5カ条は以下の通りである。

1.自社のビジネスを遠くから俯瞰する(鳥の目)

2.顧客を近くから観察する(虫の目)

3.世の中の動きを展望する(魚の目)

4.現在の習慣や慣行を疑ってみる

5.新しい組み合わせを考えてみる

 

5番の「新しい組み合わせを考えてみる」は、以前企画の参考書でも学んだような「アイデアは0から生み出すのではなく既存の事物の組合せである」ということとリンクした。

4番は、簡単なことのようで普段なかなかこういうことをやらないのでは?と少し身の引き締まる想いがした。自分が当たり前のように行っていること、昔から今まで引き継がれてきた事業、それは本当に「今でも通用するのだろうか?」 ・・・このようなことを普段から意識できたら何かが変わるのでは、と感じた。

 

そして、このBMDに用いられるのが以下の「ビジネスモデルキャンバス」である*1

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このビジネスモデルキャンバスには、ご覧の通り以下9つの要素が含まれている。

1.顧客セグメント

→組織が価値を提供したい個人or組織

2.価値提案

→特定の顧客セグメントに価値提供するプロダクトorサービスのバンドル

3.チャネル

→顧客セグメントに価値を届ける方法・役割(顧客との関係の上に構築)

4.顧客との関係

→組織が顧客と確立する関係性とそのメカニズム

5.収益の流れ

→価値提案として獲得する金銭の流れ

6.リソース

→価値提案の拠り所として必要とされる最も重要な経営資源

7.主要活動

→価値生成のために必要とされる最重要の活動(リソースに依存する)

8.パートナー

→リソースを補完または主要活動に参画する組織外部の協力者

9.コスト構造

→ビジネスモデルを運営する上での金銭的コスト

 

それでは、実際にビジネスモデルを描写するにはどうすれば良いのだろうか?白井先生によれば、ビジネスモデルの描写には以下の3点が必要となる。

1.BMDについて議論できるように共通言語をもつ

2.ビッグピクチャーを俯瞰する(自社を俯瞰する)

3.BMDイノベーションに対する基点をもつ

 

1番は、私が入社前の今非常に強く意識していることである。他職種、他分野との間に知識や認識のズレがあれば、コミュニケーションをスムーズに行うことができない。そのため、「共通認識」が必要であると考えている。BMDを行う上においても、やはり「共通言語」をもつということは非常に重要なものとなっている。

 

2.グループワーク①「もしプロ野球球団の運営を任されたら?」

午前の部においては、「赤字状態のプロ野球球団を黒字にするために運営を任された」という前提で、ビジネスモデルキャンバスにアイデア(項目)を書いた付箋紙を置いていこうと試みる。

 

まずは現状(赤字)について考える。分かりやすいところから言えば、顧客ターゲットは「ファン」、「広告主」という2軸のマルチメディア市場である。

 

それでは、顧客を維持するためにやっていることは・・・?と考え出したのだが、どうもうまく思いつかない。その時、グループメンバーのAさんに「どういうときに野球を見に行きます?」と聞かれたら、すんなりと答えが出た。「地元(の球団)を応援したいという気持ちで見に行きます。」

 

これが、次の段階「赤字を黒字に変える」ビジネスモデルに繋がることとなる。私自身自分の口からアイデアを出せるとは思っていなかったので少し嬉しくなった。ぐるぐると思考を巡らせて答えが出ない時、自分が顧客となったと仮定して「なぜ?」を自分自身に問えば答えは出やすいのかもしれない、と感じた。

 

ここから、黒字転換のために「地元愛を高める」ことに焦点を定め、BMDを行った。例えば、「地元の名産品とコラボする」・・・そのためには地元の企業をパートナーとしなければならない為、営業を行う人的リソースが必要となる。人件費等のコストは発生するが、地元愛を高めることで地元全体からの収益を図る・・・という案が出た。

 

この際、ビジネスデザインキャンバスには付箋紙が既に貼られていた状態でグループメンバーのBさんがプレゼンテーションを行っていたのだが、先生は「本来は付箋紙を1枚1枚貼りながら流れを説明した方が良い。午後のプレゼンテーションはそのように行っていただきます。」と仰っていた。

 

この時、ビジネスデザインキャンバスを使ったプレゼンテーションに関するアニメーションを見せていただいたのだが、付箋紙が全て貼られた状態のものを見せると聞き手側は「一体なんだこれは?」という顔をする。ところが、付箋紙を全て外し1枚1枚貼りながらその「流れ」を説明することで聞き手側は大いに納得できる、そのような内容だった。

 

つまり、ビジネスモデルキャンバスを知らない人にとっては最初から付箋紙(項目)が貼られていてもてんでその状況が理解できない。そのような場合にも対応できる、かつ聞き手側にとって最大限わかりやすくするためには項目を1つ1つ提示しながらその流れを自らの口で補足することが重要なのである。

 

3.グループワーク②「もし近未来のキッチンのプロデュースを任されたら?」

午後の部に入ると、第2のグループワークを行うことになる。私たちは、大手キッチンメーカーと連携し近未来のキッチンを考えることとなる。ターゲットは、夫・子供と共に暮らす30歳前後の(専業)主婦。あまり料理には慣れていない。これを前提に話し合いが進められた。

 

まず第1に、「顧客ジョブマップ」が用いられる。これは、顧客のジョブ(顧客が本当にしたいと思っていること)に基づき、計画→収集→準備→確認→履行→監視(→解決)→修正→完了というプロセスを順に追っていくものである。

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ここは、グループ全員が各々多様な意見を出すことができた。私もすんなりとイメージを浮かばせることができた。ターゲットになったつもりで考えてみると、普段料理をする中でやはり「料理をうまく完成させたい」という個人的欲求に加え、家族や周囲から「良き妻・良き母と思われたい」という社会的欲求があるだろう、と。

 

そこから実際に料理を行うまでのプロセスを考えていくのだが、思った以上に案が多く出たのが「計画する」という項目であった。Aさんは「チラシを見る」、Bさんは「家(冷蔵庫)にある残りの食材を確認する」、私は「食費ないしは生活費を確認する」といったように各々違う観点からの意見が出て面白く感じた。

 

続いて、ターゲットの「ペイン(最小化したいこと)」「ゲイン(最大したいこと)」について考えていくことになる。例えば、ペインとしては「調理時間」、「食費」、「片付け」など。ゲインとしては、「好みの味にすること」、「レシピのレパートリー」など。これを元に、「実際に近未来のシステムキッチンを考える」という次の段階に移っていく。

 

第2に、「機会マップ」を用いてターゲットのペインとゲインを「満足度」「重要度」の2軸を機転に置いていく。

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このマップにおいては、「重要度は高いが満足度が低い」項目が真のニーズとして浮き彫りになる。(逆に、「重要度は低いが満足度が高い」項目については切り捨てる手法もある、と先生が教えてくださった。)

 

この「真のニーズ」に当たるペイン・ゲインを6つピックアップし、第3に「ブレーンライティングシート」を活用する。

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ここではまずピックアップしたペインとゲインを並べ、その原因を皆で考える。しかし、その後の「アイデア」に関しては各々が考えて1人1人付箋紙を貼っていく。これは、先生曰く「アイデアを出すとなった時に、話し合いであるとなかなか案を言い出すことの出来ない人が出てくる。我よ我よという人が1人で喋ってしまう」。そのために、敢えてアイデア部分だけは話し合わず各々に思考の時間を与えるということであった。これは私も非常にやりやすく、スムーズにアイデアを出すことが出来た。

 

第4に、これを「価値提案マップ」に落とし込み付箋紙を並べてゆく。これは、顧客のジョブに基づいたペインに対する「鎮痛効果」、ゲインに対する「滋養効果」(先ほどのブレーンライティングシートでいう「アイデア」部分)を考え、そのためのプロダクトないしはサービスを生み出すというものである。

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やはり、多種多様なアイデアが出たが似てるところはまとめてしまい、異なるが取り入れたいという案は組み合わせ、一つの付箋紙に落とし込む。このことで、マップ自体がすっきりとしプレゼンテーションの際に話しやすくなる。私はこのプレゼンテーションを担当したのだが、これも最初から付箋紙が貼られた状態であったため、口で補足することを前提に、なるべくシンプルかつ分かりやすく、ということを念頭に置いていた。

 

これを元に、第5にビジネスモデルキャンバスに移っていく。
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グループの案としては、「冷蔵庫に取り付けるセンサー付きカメラ(スマホ連携)」、「食費や家族の好み、冷蔵庫にある食材等諸要素を鑑みた上で献立を提案してくれるレシピアプリ」という2つのものに落とし込まれた。

 

このプレゼンテーションはグループメンバーのAさんが担当したが、付箋紙を1枚ずつ貼りながら流れを説明していく形をとった。やはり、最初から貼ってあるものを説明する時よりも格段に分かりやすく相手が伝えたいことが論理的かつスムーズに伝わってきた。

 

4.このセミナーを受けて

9:30~17:30という8時間であったが、全体を通して非常に密な時間を過ごせたと感じる。まず、ビジネスモデルデザインのなんたるかを学び、それを実践する。初めて知ることも含めて情報量が多く、ワーク中に混乱してしまうこともあったがそこは素直にグループメンバーや先生に質問するよう心掛けた。そうすると、質問の答えからもう一度考え直して実践することですんなりと知識が入ってきた。

 

また、プレゼンテーションを行う際に「どうすれば聞き手側に自分の伝えたいことが最大限伝わるのか」ということを学ぶことができた。付箋紙を1枚1枚貼り、口頭で補足しながら流れを説明していく。実際にやってみるとそれは思っていたよりも難しいことであったが、なるべく「流れ」が途切れないように話すことを意識した。そして何より、自分がプレゼンテーションを行った反省点として、実際にプレゼンテーションを行って初めて「自分の理解が浅い」ということに気付いたことが浮き彫りになった。

 

「自分が使っているもの」(今回で言えば価値提案マップ等)の仕組み、「自分が提案したいアイデア」の流れを徹底的に理解していない限りはスムーズにプレゼンテーションを行うことはできない、ということがはっきりと分かった。この反省点を活かすためにも、事前のシミュレーションや理解度の確認は今後しっかりと行っていきたいと感じた。

 

「ビジネスモデルデザイン1日体験コース(基礎編I)」・・・「1日体験」とは言えど、本当に多くのことを学ぶことができた。昼食は先生が「グループでの食事」を促してくださったり、グループワーク中に飴を配ってくださったりと、先生のご厚意やお人柄により楽しく、リラックスして過ごすことができた。このセミナーで学んだこと、感じたことをしっかりと胸に刻み、これからに活かしていきたいと強く想う。

 

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